純血種という病
この記事では、ニューヨーク在住のジャーナリストであるマイケル・ブランドーの『純血種という病―商品化される犬とペット産業の暗い歴史』について紹介します。
■犬たちはなぜ苦しまなければならないのか?■
ケネルクラブ、ドッグショー、ブリーダーによる犬のブランド化のおかげで、多くの「純血種」が遺伝性障害に苦しんでいる。
私たちは「人類最良の友」にいったい何をしてきたのか?
人間の強欲と犬の受難を描いた「純血種」の壮絶な社会史。(Amazon紹介文より)
この本は、読んでいて気持ちが重くなる本ではありますが、ぜひ多くの人に読んでほしい一冊です。
人間とってペットとは一体何なのかというのを考えさせられる本です。
この本は一貫して、純血種の犬にこだわるがために、いかに無理な交配が行われてきたか、そして犬たちの健康が損なわれてきたかを様々な例をもとに書いています。
ブルドッグをはじめとする短頭種は気道が狭く、呼吸が難しいことや、シェパードが背中から腰にかけての傾斜を強くしたために足に負担がかかりやすいなどは、知っている人も多いのではないかと思います。
この本では、10年にわたって犬の散歩代行をしてきた著者の経験も交えながら、「純血種」という見た目や血統を信奉するばかりに、犬個体の幸せのことを考えると、明らかにおかしな交配が繰り返されてきたことを様々な側面から述べています。
その背後にある優生学の思想や、いかに犬が商品化されてきたかについても手厳しく書いています。
私は、ブルドックのYouTubeチャンネルを登録していて、「かわいい」と思ってみています。でも、ちょっどどんくさかったり、おじさんくさかったり、すぐにばててしまったりという「かわいい」しぐさの多くは、体に無理があるからでもあるからだと思います。
それ以外にも、私は普段から「この犬種はかわいいよね」など犬友と話すこともあります。この本を読むと、純血種信仰がいかに自分を含めた身の回りにはびこっていて、その何気ない日常にある純血種信仰が犬への負担を続けさせている要因になっているかを感じます。
わんちゃんは私たちの生活に潤いをもたらしてくれる存在ではありますが、私たちはわんちゃんの生活(そして「犬」という種全体)に潤いをもたらしているのかというのを問いかけてくれる本です。