藤堂志津子の「秋の猫」
藤堂奈津子の「秋の猫」の紹介です。
【第16回柴田錬三郎賞受賞作】男はもうこりごりと思った私は、ついに念願の猫を飼うことにした。が、二匹のうちの一匹がどうしてもなつかない。表題作「秋の猫」。夫婦で犬を飼い始めたとたん、仕事は順調、夫は女をつくった。いざ離婚というときに、夫も私も犬の親権を主張して譲らない。「幸運の犬」ほか、犬や猫との交流をとおして、心を癒され、孤独の寂しさを埋めてゆく男女を描く、心温まる短編集。(Amazon紹介文より)
5つの短編集で男女の恋愛が主なテーマですが、いずれのストーリーもわんちゃんか猫ちゃんが物語で重要な役割を担っています。
どのストーリーも主人公は三十路を過ぎた女性です。
恋愛ストーリーなのですが、ロマンス的なものではなく、あまり恋愛に夢を持てず、将来に漠然な不安を抱えながら現在を生きているような女性の気持ちを描いていました。
感想
ペットを飼っている人なら、ペットに対する感情については共感できるところがたくさんあると思います!
例えば、「病む犬」という短編は、愛犬のマシューの高額治療費で生活費が圧迫されていた主人公が、治療費捻出のため、あまりタイプではない男の人と距離を縮めていくという話なんですが、主人公が愛犬マシューにかける愛情について、次のように言っています。
相手にはぐらかされず、肩すかしをくわされないことが約束されていると、ひとはこんなにも安心して心ゆくまで相手を愛することができるものだと、私は、はじめて知った
自分のペットを素直に愛せるのは、相手に裏切られないという、信頼感があるのかもしれないなぁと思いました。