仁科邦男「犬たちの明治維新:ポチの誕生」
「犬たちの明治維新: ポチの誕生」 (草思社文庫)の紹介です。
幕末の開国は、犬たちにとっても激動の時代の幕開けだった。幕府から米国への贈り物としてペリー艦隊に乗り海を渡った狆。下田や横浜に現れた外国人に棒で殴られても応戦した町犬、村犬たち。明治を迎えると、洋犬が世を席巻。多くの洋犬がポチと名付けられ、町じゅうポチだらけの時代が到来する―。膨大な史料を渉猟し「犬にとっての幕末明治」を描く傑作ノンフィクション。(Amazon紹介文より)
「犬」というキーワードで昔の資料にあたり、開国とともに犬の環境がどう変わったのか、記述した本です。
昔は里犬といって里や村に犬が住み着き、別に飼い主といった概念もなかったようなのですが、開国と同時に洋犬が入ってきて、それにともなって、里犬が駆除され、犬を家族の一員として「飼う」という習慣ができたようです。
犬にとっても激動の時代だったのですね。かなりの数の里犬が撲殺されたそうです。
四代目柳亭左楽の落語「手飼いの犬」
新時代の愛犬家(犬を溺愛する人?)の話も出てきます。
ちょっと笑ってしまったのは、四代目柳亭左楽の落語「手飼いの犬」(明治31年)のくだりです(ハードカバー版のp. 175-176です)。
噺家の左楽は華族の家に呼ばれます。
そこで金の鈴をつけた、手飼いのカメ(洋犬のことを「カメ」と呼んでいたようです)に会います。
そのカメは左楽の口の周りなどをペロペロするので、左楽は気持ち悪くて「およしください」と丁寧にいいつつ、困っていたそうです。
すると、殿が「左楽はカメが嫌いだから洗ってやれ」といって、湯桶とたらいがでてきたそうです。
左楽はてっきり自分用に出てきたと思ったのですが、殿は「ほら、カメの舌を洗ってあげろ」といったそうです。
犬好きはこうなっちゃうんでしょうね(笑)